「じゃあ詩基君、今日のレッスンはここまでね」

「ありがとうございました、先生」

いつものようにレッスン終了。

教室の外に出ようとして扉を開けたとき・・・。

「お前バイオリンうまいな」

「・・・!?」


何だこいつ。

チェロを背負ってるけど・・・近くの教室のやつか?

「うまいかどうかなんてわからないだろ?教室は防音だ、俺の音は聞こえなかったはずだ。」


「今聴いたんじゃないもん、こないだの発表会!」

「あぁ・・・」

そういえばそんなのも出たなぁ。





「名前、シキって読むのか?」

「そうだよ。・・・ってかお前は誰なんだよ」

「あ、忘れてた!俺は衛二。チェロやってんだ♪」

見ればわかるよ、背負ってるだろ。

「そうだ、詩基!今週の日曜日、俺の教室の発表会だから来いよ!じゃ、またな!!!」











何なんだよホントに・・・。

“また”って、これからも会う気かよ。

でも、あいつのチェロはちょっと聞いてみたいかもな。











結局来てしまった、あいつの発表会。

もともと日曜日は予定があいていたからいいけど。




そしてあいつのチェロを聴いた。

驚いた。

あいつの正装があまりに似合わなかったからとかではない。

同じ小5のやつに嫉妬したのは初めてだった。



「・・・帰ってバイオリンを弾こう」


俺は足早に会場を去った。









数日後、レッスンを終えた俺はチェロケースの影を見た。

扉を開けると・・・

「よっ、詩基!日曜日来てくれた?」

「あぁ行ったよ」

「うそっ!何で話しかけてくれなかったんだよーー」

こいつは何故いつもこんなにテンションが高いんだ。



「で、俺の演奏どうだった?」

嫉妬したなんて言いたくない。



「お前・・・将来、奏華高校の音楽科でも行くのか?」

奏華は俺たちの住む市で有名な、音楽科のある学校だ。

「もちろん♪詩基も?」

「あぁ。じゃあその時に感想言ってやるよ」

「えぇ〜そんな何年も先なのか〜〜」







適当な話で流そうと思ったのに、言ってから気づいた。

“一緒に高校行こう”って言ったようなもんじゃないか。

「じゃあ詩基、高校入ったら上手いやつ集めて演奏しような」

「・・・あぁ、わかったよ衛二」




もう、仕方ない。








俺は本心では、こいつと音楽がしたいんだから。











それからもたびたびレッスン後に衛二に会った。



でも今はそれも少し楽しみだ。












・・・・・・・・・・あとがき・・・・・・・・・・
今回の2人は別の話のために出来たキャラです。
その話は2人が大学生になってからのお話・・・。
でもこの番外編みたいな話が先に出来てしまったので、アップしました。

かわいい二人の昔話、のはずだったんですけどね。
なんか詩基が素直じゃない!!!!!
衛二はかわいいけど、確実にバカな子だから・・・。
バカな子ほどかわいいけど。(笑

詩基は小5のときにはすでに負けず嫌いで、衛二は昔から人懐っこい子でした。
どうしてそんな二人が友達になれたのか・・・。
それこそ音楽の力さ☆


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